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ECサイトの制作方法には、無料ASPカートや有料ASPカート、ECパッケージ・クラウドECなどがあります。それぞれの方法で制作手順や構築費用、制作期間などが異なるため、自社の事業規模に応じて適切な制作方法を選ぶことが重要です。本記事では、ECサイトの制作方法や制作方法別の制作手順について、ECサイト制作の初心者にもわかりやすく解説していきます。
ECサイトの制作方法は事業規模で決める
ECサイトの制作方法は、自社の事業規模に合わせて決めるのが一般的です。ECサイトの制作方法には、ASPカート(無料・有料)やECパッケージ・クラウドECなどがあります。ECサイト制作にかかる費用の相場や制作期間は、サイトの構築方法によって異なります。
各構築方法の費用相場や制作期間の目安は下表のとおりです。
事業規模 | 構築方法 | 費用相場 | 制作期間の目安 |
---|---|---|---|
個人 | 無料ASPカート |
初期費用:0円 月額費用:0円 |
30分程度 |
年商1億円未満 | 有料ASPカート |
初期費用:数千円~10万円未満 月額費用:数千円~5万円 |
1∼3カ月程度 |
年商1億円以上 | ECパッケージ・クラウドEC |
初期費用:数百万円~数千万円 月額費用:10万円以上 |
3ヶ月~6ヶ月程度 |
上記のほかにも、オープンソースやフルスクラッチといった構築方法も存在します。ただし、これらの構築方法の場合は自社で一からECサイトを制作する必要があるため、初心者には向かない方法であるといえるでしょう。
無料ASPカート
無料ASPカートは、初期費用・月額費用なしで使えるASPカートのことです。そもそもASPとは「Application Service Provider」の略であり、クラウド上で開発されたソフトウェアを利用できる仕組みを指します。そしてASPカートはショッピングカート機能を備えた仕組みであり、ASPカートを利用することで独自にショッピングカート機能を開発する手間を省くことが可能です。
代表的な無料ASPカートには、たとえば「BASE」や「STORES」、「カラーミーショップ」などがあります。無料ASPカートの場合は細かい設定などがないため、ECサイトによっては30分程度で制作可能です。無料ASPに登録した後、ECサイトのテンプレートを選択して商品登録を行うことが大まかな流れとなります。
無料ASPカートのメリットおよびデメリットについて、下表に記載します。
メリット | デメリット |
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上記のとおり、無料ASPカートは予算がなくてもすぐにECサイトを制作できるメリットがある一方、機能制限などがある点はデメリットとなります。そのため、無料ASPカートはなるべく費用や期間をかけずに簡単なECサイトを制作したい個人などにおすすめできる制作方法です。
有料ASPカート
有料ASPカートは、無料ASPカートとは違って初期費用や月額費用が必要となるASPカートです。費用相場の目安はECサイトによっても異なりますが、およそ初期費用:数千円~10万円未満、月額費用:数千円~5万円となります。その分、有料ASPカートは無料ASPカートよりも豊富な機能が搭載されています。
有料ASPカートの場合でも、ASP登録や商品登録などの作業は無料ASPカートの場合と同様です。一方、有料ASPカートではECサイトのテンプレートなどの機能カスタマイズを行うケースも多いため、制作期間は1∼3カ月程度となります。
有料ASPカートのメリットおよびデメリットは下表のとおりです。
メリット | デメリット |
---|---|
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有料ASPカートは、初期費用や月額費用がかかる分、無料ASPカートよりも機能性が高くなるため、ECビジネスを拡大していきたい小規模事業者や年商1億円未満の企業などにおすすめできるでしょう。
ECパッケージ・クラウドEC
ECパッケージとは、ECサイトの制作用に開発されたパッケージ製品です。豊富な機能カスタマイズが可能であり、大規模なECサイト構築において多く用いられています。クラウドECとは、SaaS(Software as a Service)の一種であり、クラウド上にあるプラットフォームを使ってECサイトを構築する方法です。
ECパッケージ・クラウドECの費用相場はASPカートよりも高く、初期費用:数百万円~数千万円、月額費用:10万円以上が大まかな目安です。また、制作期間は3ヶ月~6ヶ月程度となります。
ECパッケージとクラウドECのメリット・デメリットは、それぞれ下表のとおりです。
メリット | デメリット | |
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ECパッケージ |
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クラウドEC |
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ECパッケージ・クラウドECともに、ASPカートよりも費用がかかる一方、外部システムとの連携がしやすいメリットなどがあります。ECパッケージは柔軟に機能カスタマイズを行いたい企業に、クラウドECは自社でのインフラ管理の手間を軽減しながらクラウド上のシステムを活用したい企業におすすめできるでしょう。
無料・有料ASPカートでのECサイト制作手順
ここでは、ASPカートでECサイトを制作する手順について解説していきます。
➀法令や必要な許可等の確認
はじめに、ECビジネスを行うにあたって必要な法令や許可などを確認していきます。たとえば、ECビジネスを行う際は特定商取引法の法令に従う必要があり、返品に関する事項などの記載が求められます。
また、販売する商品の種類によっても必要な許可があり、たとえば食品を製造・販売する際は食品衛生法に基づく営業許可が必要です。他にも、たとえば古本や古着などの中古品を販売する場合は、古物商許可の申請・取得が求められます。
初心者向けアドバイス
ECビジネスを行う際は、特定商取引法などの法令を十分に確認する 販売する商品によっても必要な許可などがあるため、取り扱う商品に関する情報調査を行う
➁ASPカートを選定・登録する
次に、ASPカートの選定・登録を行います。特に有料ASPの場合は初期費用・月額費用がかかるため、2~3社のサービスを比較して自社の希望条件に合ったものを選定するとよいでしょう。対象のASPカートを選定したら、メールアドレスやパスワードなどの基本情報を設定してアカウント作成を行います。
また、ECサイトのURLに表示されるドメイン名も決定していきますが、ドメイン名は一度決めたら変更できないため、慎重に決めていくことが重要です。自社の事業内容や特徴を明確にイメージできるドメイン名を事前に考えておくようにしましょう。
初心者向けアドバイス
特に有料ASPカートの場合は、2~3社の候補から自社の希望条件に合ったASPカートを選定する ECサイトのドメイン名は、自社の事業内容や特徴を明確にイメージできるものを事前に考えておく
③ECサイトのテンプレートを選ぶ
続いて、ECサイトのテンプレートを選びます。無料ASPカートの場合は既存のテンプレートから選ぶことになりますが、有料ASPカートの場合は独自にカスタマイズすることも可能です。ただし、カスタマイズする場合は制作会社への依頼費用で数十万円程度かかることもあるため、自社の予算を考慮しながら必要性を検討していくようにしましょう。
また、既存のテンプレートを選ぶ場合・カスタマイズする場合のいずれにおいても、なるべくシンプルなデザインを意識することがポイントです。ユーザーの多くはECサイトのデザインではなく販売商品を見ているため、過度に派手なデザインなどは避けたほうがよいでしょう。
初心者向けアドバイス
テンプレートをカスタマイズする際は、自社の予算を考慮しながら必要性を検討する 過度に派手なデザインを避け、なるべくシンプルなデザインを意識する
④決済方法を設定する
テンプレートの選定後は、決済方法を設定します。ECサイトの売上を高めるためには、クレジットカード決済やID決済(PayPay・Amazon Payなど)といったユーザーが普段からよく利用している決済方法を設定することが大切です。自社のターゲット層が多く利用している決済方法を設定することで、決済画面でのユーザーの離脱率を減らすことができるでしょう。
ただし、それぞれの決済方法には決済手数料がかかります。すべての決済方法に対応することが理想的ではあるものの、決済方法によって手数料は異なるため、さまざまな決済方法を設定することで利益率の減少や事業の赤字化を招くリスクもあります。
そのため、ユーザーの利用度や決済手数料などを総合的に考慮しながら、慎重に決済方法を設定していくようにしましょう。
初心者向けアドバイス
自社のターゲット層が多く利用している決済方法を設定する それぞれの決済方法には決済手数料がかかる点も認識しておく
⑤配送方法を設定する
配送方法の設定では、商品の配送を依頼する配送会社を選定していきます。配送会社によってサイズや重量の設定が異なるため、自社がよく取り扱う商品のサイズ・重量に見合った配送会社を選ぶようにしましょう。
選定の際は、価格の安さだけでなく、商品の補償や追跡サービスなどの付帯サービスについても確認しておくことが大切です。また、商品の出荷が多くなる場合は、商品の梱包も含めてお願いできる会社を見つけるのも有効な手段となるでしょう。
初心者向けアドバイス
自社がよく取り扱う商品のサイズ・重量に見合った配送会社を選ぶ 価格や商品補償、追跡サービスなどを総合的に踏まえて選定することが大切
⑥ASPカートに商品を登録する
続いて、ASPカートに商品を登録していきます。登録する主な項目は以下のとおりです。
登録する主な項目
- 商品名
- 商品画像
- 商品に関する説明文
- 商品の価格
- 商品の在庫数など
上記のなかでも、特に商品画像と説明文は売上に大きく影響する大事な要素です。商品画像を制作する際は、照明や背景なども工夫しつつ、さまざまな角度で商品を撮影するようにしましょう。また、商品画像だけでは伝わりにくい商品の視覚以外の情報(質感や食感など)は、説明文で訴求すると効果的です。
初心者向けアドバイス
商品画像は、照明や背景なども工夫しながら、さまざまな角度で複数枚撮影する 視覚以外の情報(質感や食感など)は説明文で訴求する
⑦テスト注文で流れや不具合を確認する
商品登録ができたら、実際にテスト注文を行い、ECサイトの運営プロセスに不具合がないかを確認していきます。たとえば、設定しているすべての決済方法(クレジットカード決済やID決済など)で商品を購入し、注文の流れに違和感がないかを確かめてみることが大切です。
また、顧客目線に立って、ECサイトの画面遷移や注文時・配送時に届く確認メールなどが丁寧に設計されているかを確認していくようにしましょう。
初心者向けアドバイス
設定しているすべての決済方法でテスト注文を行い、注文の流れに違和感がないかを確認する 顧客目線に立って、画面遷移や確認メールなどに問題がないかを確認する
⑧ECサイトの運営を開始する
ECサイトを構築した後は、ECサイトの運営を開始します。ECサイトの運営では、ECサイトのレイアウト改善や商品の追加登録、カスタマーサポートなど、さまざまな業務を行うことが必要です。継続的にECサイトの運営を続けられるよう、業務の役割分担をしっかりと行っていくことが重要となります。
また、ECサイトを実際に運営してみて初めてわかる改善点なども出てくるため、運営開始後もECサイトに対する課題や要望を取りまとめ、定期的にアップデートを行っていくようにしましょう。
初心者向けアドバイス
継続的にECサイトの運営を続けられるように業務の役割分担を明確化する 運営開始後もECサイトに対する課題や要望を取りまとめ、定期的にアップデートを行っていく
ECパッケージ・クラウドECでのECサイト制作手順
続いて、ECパッケージ・クラウドECでECサイトを制作する際の手順について解説していきます。
➀要件定義書を作成する
はじめに、構築するECサイトの要件定義書を作成します。たとえば、要件定義では以下のような項目を決めていきます。
要件定義の例
- ECサイトの方向性や世界観
- メインとなるターゲット層
- 実装する機能
- 画面のデザイン性
- 他ツールとの連携
- 取り扱う商品の種類など
要件定義では、関係者間で認識相違が生じないようにするために、なるべく具体的な文言や数値を使って要件定義書を作成することが重要です。また、作成した要件定義書は関係者に幅広く共有し、事前に合意形成を図っておくことも大事なポイントとなります。
初心者向けアドバイス
要件定義書は、認識相違が生じないようにできるだけ具体的な文言や数値を使って作成する 要件定義書は関係者に幅広く共有し、事前に合意形成を図っておく
➁ECサイトの制作会社を選定する
要件定義書を作成したら、要件定義書の内容に従ってECサイトを構築できる制作会社を選定していきます。制作会社を選定する際は、制作会社の実績や制作事例を確認することが重要です。また、見積もりをもらう際は費用の内訳やカスタマイズ時の追加費用に関しても記載してもらうようにしましょう。
加えて、ECサイト構築後の運営時のサポート対応について確認しておくことも大切です。制作会社選びで失敗しないためにも、複数の制作会社の提案内容や実績、見積もりを比較し、最も自社に適した制作会社を見つけていくようにしましょう。
初心者向けアドバイス
制作会社を選ぶ際は、実績や制作事例、詳細な見積もり、構築後のサポート対応をしっかりと確認する 複数の制作会社の提案内容や実績、見積もりを比較し、最も自社に適した制作会社を選定する
③制作会社がECサイトを設計・開発する
制作会社の選定後は、制作会社が要件定義を基にECサイトの設計を行っていきます。要件定義通りにECサイトの構築を進めるためには、設計段階から自社側もしっかりと関わり、要件定義書と設計書の内容に相違がないかを確認していくことが大切です。
その後は、設計書に従ってECサイトの開発工程に進みます。この段階でも制作会社に丸投げせず、開発の進捗状況や品質状況を定期的に確認し、問題点などがある場合は制作会社側から早めに共有してもらうようにしましょう。
初心者向けアドバイス
ECサイトの設計・開発を制作会社に丸投げせず、設計や開発の状況をしっかりと確認していく 問題点などが生じた際は、制作会社側から早めに共有してもらうようにする
④ECサイトの運用テストを実施する
ECサイトの設計・開発が終わったら、ECサイトの運用テストを実施していきます。要件定義書や設計書を参照しながら、実際にECサイトを操作して要件通りになっているかを確認していきましょう。
テストの際は、実際に商品を購入する顧客の立場になり、画面のレイアウトや注文の流れがわかりやすいかをチェックしていくことが大切です。また、1人の担当者だけでテストを行うのではなく、複数人の担当者で確認したほうが問題点や改善点を見つけやすくなります。
初心者向けアドバイス
実際に商品を購入する顧客の立場になり、画面のレイアウトや注文の流れを確認していく 複数人の担当者で確認したほうが、問題点や改善点を見つけやすくなる
⑤ECサイトの運営を開始する
無事に運用テストを完了できたら、ECサイトの運営を開始します。運営の開始直後は想定外のシステムトラブルなどが生じやすいため、運用マニュアルを整備しつつ、社内の運営体制を十分に構築しておくことが重要です。また、いつでも制作会社と連絡を取れるように準備をしておきましょう。
集客面に関しては、ECサイトのオープン直後は顧客が集まりにくいため、自社のホームページやSNSなどで事前にECサイトの告知を行っておくこともポイントです。
初心者向けアドバイス
運営の開始直後は想定外のシステムトラブルなどが生じやすいため、マニュアルや体制の整備をしておく
まとめ
ECサイトの制作方法には無料ASPカートや有料ASPカート、ECパッケージ・クラウドECなどがあり、自社の事業規模に応じて適切な制作方法を選ぶことが重要です。ECサイトを制作する際は、ECビジネスを行うにあたって必要な法令や許可などを事前に確認することが求められます。
その後は、自社に合ったASPカートや制作会社を選定し、ECサイトの設計や構築、各種設定を進めていきましょう。また、ECサイトは継続的に運営していくことになるため、構築後の運営体制やサポート体制を整備しておくことも大切です。